中高一貫(六年制普通科)

研究成果発表

平成26年度

AYDPO2014(アジア人材育成プログラム)応募作文テーマ「持続可能な開発について」

AYDPO2014(アジア人材育成プログラム)

AYDPO2014(Asian Youth Development Program 2014:アジアユース人材育成プログラム)は日本を含むアジア14カ国から55名の高校生が沖縄に集い、20日間にわたってエネルギー問題について学びながら交流を深めるプログラムです。プログラムの言語はすべて英語。

今年度は、日本本土の多数のエントリーの中から13名の高校生が選ばれ参加しました。本校からも六年制普通科2年の奈良勇輝君がエントリーし、このプログラムに初めて選ばれ、参加しています。

国際協力、最先端の科学技術、ソーシャルビジネスなどに関する講義やグループディスカッションの他、ハーリー体験、スノーケリング、沖縄科学技術大学院大学やJICA沖縄国際センター訪問など、充実したプログラムを通して、参加する高校生たちはともに切磋琢磨しながら大きく成長していきます。最終日には20日間の学びを結集した、参加青年による感動の成果発表を行いました。AYDPO日記では、笑いあり、涙ありの20日間の様子を参加する高校生たちが日々綴っていきます。

20日間の共同生活を通じて育まれる、国境を越えた友情。
充実のプログラムで大きな成長を遂げる、高校生たち。
アジア14カ国55名の高校生たちが密度の濃い時間を共有。

AYDPO2014(アジア人材育成プログラム)

主催:沖縄県 期間:2014年8月3日(月)~22日(金)20日間
会場:沖縄県糸満市、名護市、渡嘉敷村、伊江村、恩納村、宜野湾市
参加者:海外参加者29名/国内参加者26名
内訳:ブルネイ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、韓国、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム、東ティモール、日本本土、沖縄

応募作文テーマ「持続可能な開発について」

持続可能な社会を目指して私にできる事六年制普通科2年  奈良勇輝

 「風呂敷」と出会った時の感動は私は今でも忘れない。
祖父母の家に遊びに行った帰り、祖母がおはぎを入れた重箱を風呂敷に包んで渡してくれたことがある。私はその時初めて風呂敷というものを見た。
「これは風呂敷と言って、包み方や縛り方を変えることによって、なんでも運べる袋なんだよ」と祖母は言った。当時の私には風呂敷が万能な袋に思えとても新鮮だった。しかし昔はありふれた当たり前のもので日常的に使われていたらしい。今、ほとんどの人は風呂敷など使わない。包むというひと手間を厭い、最初から包む機能を持ったビニール袋を当然のように使い消費している。
持続可能な社会にとって、風呂敷は大きな意味を持っていると思う。持続可能な社会の課題は言うまでもなく、今の生活レベルを落とさずに地球環境を守ることである。ビニール袋や紙袋の代わりに風呂敷を使うことを私は推奨したい。資源の節約と産業廃棄物の削減、さらにはビニール袋を餌と誤認して捕食する海洋生物の保護など、多くの利点を持っているからだ。一度手に入れた便利で楽なビニール袋を手離し、風呂敷を使うなど、時代に逆行しているという人がいるかもしれない。しかし、現にビニール袋を有料にし、エコバックを推奨する動きが広まっている。
持続可能な社会に深い関心を持っている人で、ワンガリ=マータイさんを知らない人はいないだろう。彼女は風呂敷を巻き、「もったいない」を合言葉に、環境の保護に尽力された方だ。使えるものを使う。これほどエコな考え方はない。「もったいない」という言葉を持つ日本は、古来、物を大切にするエコな国だ。自然を崇め、原始農耕社会で培った自然からの恵みを大切に生きる習俗は、現代人の生活態度の中にも色濃く残っている。出されたご飯を残さないように、最後の一粒まで食べることに美徳を感じる国民が日本人以外にいるだろうか。日本はマータイさんの遺志を継ぎ、持続可能な開発を目指す国際社会を牽引していくことができる体質を持つ国だと考える。
私は、自分が持続可能な社会を目指してできる事は、まず自分自身が環境に配慮した生活を心がけることだ。公共交通機関を使う、レジでビニール袋は絶対に貰わない、などである。今、私はユネスコ部だけでなく生徒会にも取り組んでいる。その立場を活かして、校内でも自然の大切さや持続可能な社会の意義をみんなで一緒に考える活動を広めていきたいと思う。
持続可能な社会と聞くと難しい課題に思えるし、そんな社会本当に実現できるのかと疑問を持つ人も多いと思う。しかし、無理だと思う人ほど、考えないし行動を起こそうとしない。また、それを社会の課題だと思うから他人事になってしまう。そうではなくて、これは自分自身の課題であり、身の回りの出来事に一つひとつどう対処して行くかを問われているだけなのだと思う。

六年制普通科2年  奈良勇輝

ユネスコスクール高校生ESD作文コンテスト

今年で第4回を数える「ESD 国際交流プログラム」参加者を決めるユネスコスクール高校生ESD作文コンテストに応募した 六年制普通科2年生の好中奈々子さんが、みごとプログラムへの参加者に選抜される快挙を成し遂げました。
なお、全国からのコンテスト応募者は141名、10倍に上る難関突破でした。

主催: 公益社団法人日本ユネスコ協会連盟 ・ 株式会社三菱東京UFJ銀行
後援: 日本ユネスコ国内委員会
募集: 12 名(予定)

提出書類: 課題作文 『持続可能な社会を目指して、私にできること』
(学校で取り組んだことやあなたが経験したことなどを踏まえて、今と将来を視野に入れた考えを述べてください。)
本事業は、標記作文コンテストで優秀な成績を収められた高校生を、2014 年3 月下旬に、ドイツ・ハイデルベルグ及びフランス・パリ研修に派遣するものです。

国際交流プログラム実施日程(予定)
2014 年3 月22 日(土) 事前研修会(於:成田)
3 月23 日(日) 出発日(ドイツ・ハイデルベルグへ移動)
3 月24 日(月) ユネスコスクール訪問
3 月25 日(火) パリへ移動
3 月26 日(水)~3 月27 日(木)  ユネスコスクール、UNESCO 本部、UNESCO 日本政府代表部、三菱東京UFJ 銀行パリ支店訪問
3 月28 日(金) 市内視察(世界遺産等)、帰国日
3 月29 日(土) 帰国(到着日)

派遣費:主催者負担

持続可能な社会を目指して、私にできること六年制普通科2年生 好中奈々子

 私には忘れられない日がある。中学2年の文化祭最後の企画は、坂本龍馬がタイムスリップしてきたという創作劇だった。現代社会は、いじめ、不況、環境問題、貧困、戦争…、様々な課題を抱えている。それに気づかないふりをし、それでも豊かな生活を享受する私達に、龍馬は、「これが真の幸せちゅうもんか?平和ちゅうのは何ぜよ?」と問う。劇が終盤にさしかかったとき、龍馬役の生徒会長がステージから降り、私達の肩を叩きながら、「皆で頑張ろうやぁ。」「なんでもええんよ。考えちょるだけじゃなくて、行動に移そうやぁ。」そう呼びかけて歩き始めた。ひとりひとりに声をかけて歩く生徒会長の姿に、胸がいっぱいになった。同時に私はこれまでの自分を恥じていた。
皆がまとまらないと、「自分だけが頑張ってもどうしようもない。」と諦めていた。そのくせ、心のどこかで人と競争して勝つことがいいと思っていた。人任せで、自分中心の私。だから国際問題なんて新聞やテレビの中の出来事で、深く考えたことがなかった。それなのに、なぜ先輩は私達を励ましてくれるのだろう。先輩のようになりたい。そんな思いに突き動かされて、生徒会活動や先輩方が取り組んでいるユネスコの活動を始めた。
ユネスコ部の活動は、福祉施設訪問、災害ボランティア、私達が「お山の学校」と呼んでいる里山再生活動、地域活性化、異文化交流、ユネスコキャンプへの参加や模擬国連など、幅広い。活動は強制でなく、あくまでも自主的で自由だ。皆で貝掘りに行ったり、地域の運動会に参加したり、外国の方と料理を作ったり、「楽しい活動ばかり…」と、のんきな私は思っていた。
ところが、後になって環境汚染とは全く無縁としか思えない海に採取規制がかけられ、保護されている海洋生物がいることを知り、それが環境学習であったことに気づくのだった。自分が知ろうとしなければ、何も得られない。誰かが何かしてくれるのを待っているのでは、これまでと変わらないのだ。自分の目で、耳で、意思で学ぶ、厳しいけれど、これは本物の勉強だった。

この学びの中で、私がはっきり感じとったことがある。それは、「つまり、人だ」ということだ。
キャンパーとして参加したユネスコ子どもキャンプで学んだのは、年齢も考え方も違う仲間を受け入れる心や人と関わって生きていくことの大切さだった。スタッフとなった昨年は、人と人を結びつける難しさも楽しさも味わった。福祉施設訪問では人に喜んでもらえることが自分の喜びにもなること、異文化交流では違いを互いに認め合うことを学んだ。そしてお山の学校では、人と自然が共生していく必要性を感じている。また、地域や社会の問題について考える時、経済、エネルギー、環境など原因は様々あるが、問題にしなければならないのはそれらに関わっていく「人」ではないかという結論に、いつもたどり着く。貧困もエイズも環境問題も、当事国の人材を育成すれば済むわけではない。解決にむけて関わっていく「人間」を育てる「教育」こそ、遠回りのようではあるが解決の王道のように思える。世の中の問題は、競争ではなく協力がなければ解決はできないのだから。あの日文化祭で先輩が「一緒にやっていこうな。」と呼びかけた言葉は、「共に生きていこう。」というメッセージだったのだと、今はわかる。
この「共生」というキーワードとともに、私は「持続可能な社会」という言葉によく出合うようになった。あの日の私はグローバルな視点に驚いたけれど、「持続可能な社会」は、次世代に視点におき、ヨコだけでなくタテに、未来と「共生」していく社会である。次の人のことを考えて生きること、それは「愛」以外の何ものでもない。
ユネスコの活動を始めて3年目になる今年、私はユネスコ部の部長となり、部員も学校一の大所帯となった。先輩方の長年の活動が実を結び、高水中学校・高校はユネスコスクールに認定され、5月にはユネスコスクール初の仕事として、外務省が推進するKAKEHASHI Project でカナダの学生との学校交流を行った。ホームステイ後のパーティーでは皆が涙を流して別れを惜しんだ。相変わらず、のんびり屋の私は、いつも周囲に助けられながら活動をしている。大勢が何かをするのは、大変だ。けれど楽しい。ユネスコの活動は、仲間と共に生きることを学ぶ場である。そして新しい自分と出会う場でもある。私の中の小さな点が、少しずつ繋がりをもって感じられるようになってきた。
ところで、高水のユネスコスクールとしての活動はまだ始まったばかりだ。私に何が出来るだろうと思う。それは、私がかつて先輩から励ましてもらったように、みんなに「一緒にやっていこうね。」「皆で頑張ろうやぁ。」と声をかけていくことなのかと思う。将来に亘って「持続可能な社会」を実現していくのは、やはり「人間」であり、「共に学び共に生きる仲間」を作っていくことしかないと思えるからだ。

六年制普通科2年生 好中奈々子