2018年度付中通信第8号 共通テストの闇

2018.7.30  高水高等学校付属中学校長 宮本 剛

学校現場、特に高校課程においては、2020年度から始まる新しい入試に対応することと「アクティブ・ラーニング」型授業がどのように結びつくのか、理解できている教員はほとんどいないと思う。なぜなら、文科省の言う「主体的・対話的で深い学び」によって学び方を変えていきたいという意図はわかるものの、その成果がどのように試されるのか、想像が及ばないからである。だから実際の「大学入学共通テスト」の出題を見てから、「アクティブ・ラーニング」型授業の内容や形式を検討すべきだという意見は依然根強い。つまり今はまだ様子見で、本格的に研究にとりかかるのは早計だという考え方である。現場はかくのごとく混乱している。

学習指導要領は10年ごとに改訂され、これまでにも新しい考え方や活動が導入されるたび、教育課程を見直したり土曜日が休みになったり、いろいろな変化が起こってきたけれど、この度の混乱はレベルが違う、まさに明治以降最大の変革と言ってよい。第2次世界大戦後に日本では墨塗り教科書が使用されたが、あの時は学ぶ内容の改革であったのに対し、この度はそれと同じ規模で学び方の改革が進んでいると思えばよいだろう。

そこで私は考えるのだが、そもそも「大学入学共通テスト」のような、答えが1つに集約される形式のテストでは、結局のところ学び方改革の成果を直接図ることは難しいという結論である。つまり「共通テスト」という選抜の形式では、「主体的・対話的で深い学び」という生徒が身につけた学びの態度を測ることは困難だということである。

そうなると、大学入学選抜において考えられる作戦は1つしかない。知識量や応用力を測る「共通テスト」のウエイトは限りなく少なくして、面接や小論文、ディベート、プレゼン、活動履歴等「主体的・対話的で深い学び」によって身につけたスキルを測ることに比重を置いた選抜に変えていくしかない。

つまり、「大学入学共通テスト」をあまり意識しすぎると、当局の比重のかけ方によっては足元をすくわれ兼ねないということだ。